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2007年06月28日
尾辻かな子さんインタビュー(聞き手・要友紀子)
尾辻かな子さんインタビュー(聞き手・要友紀子)
――尾辻さんは、レズビアン当事者としてカミングアウトし、大阪府議として政治家をされてきました。そのなかで、政治家として見えてきたことや、政治家になる前から感じていたこととの違いというか、府議になってからさらに当事者として見えてきた新たな問題というのはどんなことがありますか。
まず一つは、一般的な話として、やはり日本は教育の分野で、政治教育・政治リテラシー教育が入ってないんだなあと思います。だから、地方自治のしくみ―誰がどこで何を決めているのかといったようなこと―が、ほとんど知らないままになってきていると思いますね。
例えば私も、大阪府議会にチャレンジするときに、大阪府議会って見たことなかったし、行ったこともなかったし、地元自治体の議会の社会見学にも行ったことがないような状態ですから、じゃあ一体議会で何が決まっているのか、議員さんが普段何をしてるのかというのも縁遠かったんですよね。だからそういう意味で言うと、議会に入ってから初めて、ああ、こうやって物事はこういう力学のもとで、こういう人たちで動いているんだということを改めて知ることになったんです。それはやっぱり私にとってすごい勉強になりました。例えばその人がどういうスタンスで議員をやっているのかというものの指標の一つとして、例えば市長が出す予算案に対して、その人が賛成しているのか、反対の立場なのか。地方議会は議院内閣制ではないので与党/野党って本当はないのですが、ただそういうところで、その人の現市長に対する、今の執行部に対するスタンスが見えてくるとかですね。そういうものの見方をしたことがなかったんですよね。そういう意味で言うと多分皆さんも自分のところの議員がどの議案に賛成してどの議案に反対しているのか、今自分の町が抱えている問題は何なのかということって、ほとんど誰も知らない。特に都道府県議会になると、市町村よりもより広域になるので、より色々な人の目が届きにくいというような、市民と政治との距離というのはやはり感じますね。
――今までの議員活動の中で、今言ったような、政治リテラシーを高めるとか、政治で何が、どんなことが話し合われて、どんなことが問題になっているかを、尾辻さんなりに市民にわかりやすくするため努力してきたこととか、何か工夫であるとか、そういったことはいかがでしょうか。
具体的には、議員になって最初の半年ぐらいは日々の色んな行事に追われたりしてなかなか報告できなかったのですが、半年ぐらい過ぎてからはホームページで日記をちゃんとあげるようにしたり、あと通信ですね、一応議会が終わるごとに通信を出していく。例えば議員報酬も、使用用途というのをその通信の中で公開していく。まず、情報公開をきっちりしていくことで、議会で何をやっているのか、尾辻が何をやっているのか、どういう風にお金が使われていくのかというのを見せるようにしました。
――その中で特に、これは大事だと思って力を入れてきたことというのは?
やはりマイノリティの視点だと思います。マイノリティというのは、数が多い/少ないというマジョリティ/マイノリティという分け方だけではなくて、力を奪われている人たち、というのがマイノリティの定義だと思うんですね。そういう意味で言うと、例えば大阪の府議会もそうですけど、112議席があって女性が7人しかいない。つまり、女性は世の中に半数いるにもかかわらず、意思決定のところというのは6パーセントしかいないわけですから、女性もマイノリティに入ってきます。私は28歳で議会に入りましたけれども、若い世代というのも、やはり世襲議員以外は、若くして議員になるというのはなかなか難しい。特に都道府県議になると難しいので、いないというところでいうと若者世代の声を届けるということ。そういう意味では、子どもというところまで含めたマイノリティ。あと、同性愛者としてのセクシュアルマイノリティ、というこの3つの視点の中で政策提言をしてきました。
例えば女性の視点というところでいくと、私は多分、都道府県議会、市町村議会の中で初めて、“防災と女性の視点”というところで議会質問をしました。私は阪神大震災に遭ったのですが、震災に遭った後というのは家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンスや子どもに対する暴力)が増えるんです。それはどうしてかというと、ストレスがかかるから。例えば家がなくなったり職場がなくなったり、色んなストレスがより弱い者にどんどんどんどんいってしまう現状があるのです。そういうことに対して、防災の現場というのはどうしても理系の男性ばかりで、つまり女性が助けられる側、男性が助ける側というような視点の中で、女性の視点がすっぽり落ちていた。そういう視点からもう一度震災を見直していく、というのが必要だということで、女性の視点を防災計画に入れるというようなことをやりました。
あと、若者の視点、子どもの視点というところでいくと、大阪は子ども条例というのができたのですが、その子ども条例―いろんな問題はあって、私も必ずしもこれはいい条例ではないと思っているんですが―をつくるときに、政策形成過程にちゃんと子どもたちの意見が反映されるようにするべきだということを議会で質問しまして、子ども条例をつくるときには中学生・高校生を集めて意見を聞く場というのを何回か設けました。
子どもの安全ということでは、大阪で初めて、交通安全対策に、ママチャリの後ろに乗ってる子どもたちにヘルメットを被せるべきだというキャンペーンを提言して、キャンペーンを担いました。ママチャリの後ろに子どもを乗せるとき、―最近やっとヘルメットを被せるということを東京でもやってきてますけども―、子どもの頭って柔らかいし、あんな高いところから叩きつけられると本当に危ないということからです。
同性愛者というマイノリティの視点ということでは、大阪府の公社住宅に友達同士でも入れるハウスシェアリング制度を提案し、導入が図られました。あとやはりメンタルヘルスが悪いということがありますので、自殺予防対策として、例えば多重債務者の方はここに相談を、という具合に、相談窓口のところにセクシュアルマイノリティの専門相談窓口を紹介するようにしてもらったりしました。そういう視点で、今まで議会に届かなかった、マイノリティの視点から見えてくる、生活から見えてくるものを政策に反映していこうということをやってきました。
――大阪という地域ならではの課題であるとか、当事者としてマイノリティの視点を普遍的な問題として捉えられているというのがすごくよく分かりました。こういった問題を国政の問題として発展させていくということで今回参議院に出られると思うのですが、特に国政で、尾辻さんが広げていきたい問題、取り組んでいきたい課題というのは何ですか。
まずは、国政の場でセクシュアルマイノリティの存在を可視化する、見える存在にすることというのが、一番まずは大事なことだと思います。カミングアウトのときもそうですけど、見える存在にならなければ、共に暮らしているということが分からない。そして、何に困っているのかということすら伝えられないという現状があると思います。私自身カミングアウトしてから、色んな応援メッセージとか相談のメールが来るようになったのですが、やはり日本の社会の社会制度というのが、同性と共に暮らす人たち、ほかのセクシュアルマイノリティの人たちがいるという前提で社会システムができていないせいで、本当にいろんなところで不都合が起こっているのです。その不都合も差別を恐れるがゆえに声を出さないような状況があって、そういうのを私は地方議会で解決できることはやっていこうということでやってきたんですけれども、根本的に国でしか変えられないこともある。国でしか変えられないことというのはどういうことかというと、同性パートナーの法的な承認の内容をどう考えるかということが上がってくると思うんですね。ただ、それ自身は多分10年とかのスパンのかかる、みんなで議論していかなくてはいけない、超党派でやらなくてはいけない問題だと思うので、その第一段階として、やはり可視化をしていくこと、政治の課題として取り上げられるようにならなければいけません。そのためには誰か当事者が見える形で登場することが必要だと思うのです。それは本当は当たり前で、社会の数パーセントから10パーセントいるとされている人たちが、政策決定の過程では何ら声が出せていないのはおかしい話なので、そういう意味ではそういうマイノリティ、可視化できていない人たちの声というものを今回の選挙では可視化していきたい。そしてその声を届けていきたい。というのが大きなところです。
――当事者の声を可視化して反映させていくに当たって、具体的にどういう形で当事者の声を集めたり、尾辻さんなりに一緒になって当事者と実現していこうと考えていますか。
まずは、政治のことを知ってもらうことってすごく大事だと思うんです。多分、当事者だからといって、ああ素晴らしいことだって思うよりは、ちょっと冷めた目で見ているというか、やっぱり政治自体をあきらめている人が多いので、まずその人たちに向けて、一緒に考えていってほしいということを訴えることがすごく大事だと思うんです。というのが、この選挙にはどういう意義があるのかということを伝えることがすごく大事だと思っています。どういう意義かというと、今まで、国政政党が同性愛者を公認候補として認めたことはないんです。雑民党の東郷健さんという方がいましたけど、あそこは国政政党ではありませんでしたから、議席等も持っていませんから、現に議席を持っているところで同性愛者が出たのは初めてなんですね。これは何を意味するかというと、同性愛というライフスタイルはもう否定されるものではないということです。それのみによって否定されるべきものではないということが今回の公認によって明らかになったわけです。これは民主党の中にも色々な議論がありました。やはり初めてですので、例えば保守票が逃げちゃうんじゃないかとか、そこまで冒険する必要があるのかとか。でもその中で民主党サイドとしてもやはり国際的な人権の観点からいってもそろそろこういう候補が出てもいい頃だということでゴー・サインを出したわけです。つまりそういう意味で言うと、ボールは既にこちらに投げ返されたわけです。政党のほうから。じゃあその政党から公認を受けた私が一体どれぐらいの票を受けることができるかによって、これからセクシュアルマイノリティが抱える問題も政治的解決のスピードが決まってくると思うんです。例えば今回の選挙では全国区の中で15万票取らないと当選できないと言われています。その中で例えば1万とか2万しか取れないのであれば、それは結果的にどういう判断をされるかというと、時期尚早だったんじゃないかとか、セクシュアルマイノリティの人ってそんなにやっぱりいないんだね、まあこの課題はまたゆくゆくのものだね、というようなことになると思います。ただ、それが15万票とか20万票という大きな形で数によって表れたら、これはもう誰も無視できない、そして各政党にとってもこれは政治課題であり、そういうことを掲げることによってこれだけの人が支持をしてくれるんだということが目に見えるわけですよね。それは、政治の場での社会的な問題の解決のスピードが本当に増すことになると思います。そういう意味で今回の選挙は私の選挙というよりも―もちろん私は立候補させていただくわけですけれども―、セクシュアルマイノリティが今抱えている社会的な問題を政治で解決するための試金石になってしまう選挙である、ということが言えると思うんです。なので今回だけはぜひ私たちが動く必要がある。社会が変わって欲しいと思うときにまずやっぱりしなければいけないのは、私たち自身ができることを始めることなんですね。社会が悪いんだとか世の中が悪いんだって言って批判をして、何も動かずに寝て、次の日の朝いきなり社会が変わることはないんですよね。そういう意味で言うと、世の中が変わって欲しいと思うのであれば、セクシュアルマイノリティが共に生きていることが当たり前な社会がいいなと思うのであれば、そういう社会になるために私たちができることをしていかなくちゃいけない。今回はそういう意味で言うと、具体的に一人一人の力が必要なことなんです。マイノリティはともすれば分断されがちで自分一人一人だと無力だってやっぱり思っちゃうんですよね。仲間がいなかったり孤独感があったりして。でも、この選挙は私たちが一人じゃないということ、そして、私たちには社会を変える力があるんだということを示す絶好の機会なんです。この機会って本当にそんなまたすぐに巡ってくるものではないと思うんです。今まで何十年と先人たちが差別や偏見の目に晒されながらも自分の生き方を社会に晒してきた、そこで声を上げてきた人たちがつくってきた道の延長上に、やっと国政の場にこういう存在が出ることができたっていうところで言うと、私たちも、じゃあそれを次の世代にどう繋げていくのか。やっぱりみんな10代のときとかに悩むわけですよね、孤独と自己否定っていうのは大体みんな通っていくんです。偏見のない教育を私たちは受けていないので、自分は1人かもしれないとか、おかしいのかもしれないとか、ということですごく辛い思いをしてきて、それを1人でみんな乗り越えてきてるわけですよね。じゃあ次の世代に同じような辛い思いをさせないために、今わたしたちにはできることがある。それは今回の選挙で皆さんの力を借りて尾辻を通すことなんだっていうことを、ぜひ皆さんに伝えていきたいと思っています。
――セクシュアルマイノリティの当事者じゃない人々にも関わる話も聞きたいんですが、大阪府議としてやってこられて、色んなマイノリティ、女性とか子どもとかの問題に取り組んでこられたことを引き続きまた国政の場で活かすということで、どういう風に考えていますか。
一般の人から見ると、こういうオープンな同性愛者が出ることは同性愛者たちの問題を解決するためにあるんじゃないか、という風に、自分とは関係のないもんや、みたいな感じで見られることが多いと思うんですね。ただ、先ほど言ったマイノリティ/マジョリティというような分け方に関していえば、どこかで自分がマイノリティになることは十分あるわけですよね、例えば歳を重ねていくにつれて高齢者というマイノリティ、力を奪われている存在になってしまったりもしますし、ある意味例えばどこかで怪我をしたことによっていわゆる「障害」と共に生きるということももちろんあるし、病と共に生きていくとか、人生は色んなところでマイノリティになるし、その集団がどういう集団かによってもやっぱり変わってくると思うんです。そういう意味で誰もがマイノリティになるような社会の中で、たとえマイノリティになったとしてもそれが不利にならない社会というのは、誰にとっても優しいはずなんですね。つまり、私たちの生き方を多様性のある生き方の一つとして認めるということは、今生きている全ての人たちの生き方を認めるということでもあるんです。そういう意味で言うと、これは私たちの問題ではなくて、社会が抱えている問題だと思います。今の社会はやっぱり、どうしても新自由主義的な弱肉強食とか呼ばれている格差社会の中で、痛みを知っている人たちが増えていると思います。政治家の中の二世とか三世とか、選挙という競争社会で勝ってきた人たちは、あんまり痛みを知らない、そういう弱者の痛みを知らないと思うんです。でも今こそそういう政治の世界に当事者とか痛みを知っている人がいる必要があると思うんです。政治ってもともと、そういう風になかなか声を上げられないようなマイノリティとか、そういう人たちが平等に暮らせるためにきっとあると思うんです。強い人たちはだって何に守ってもらう必要もないわけですから。そういう意味で言うと、これからの政治は、一つの価値観を持った美しい国とか、そういうことで違うものを排除していくような、そういう国になるのか、それとも色々な違いがあって、それでいいじゃないか、それこそが豊かな社会だっていう多様性を認め合う社会になるのか。今回の選挙は、そういう、これからの社会の方向性を決めるような選挙になるんじゃないかなっていう風に思います。
(動画)
●尾辻かなこインタビューその1
・セクシュアルマイノリティ当事者として、大阪府議会議員をしてから新たに見えてきたこととは
・尾辻さんなりに、市民に政治をわかりやすく伝えようとしてきた努力や工夫は
・特に、これは大事だと思って力を入れてきたことは
●尾辻かなこインタビューその2
・国政の場で広げて生きたい問題や、取り組みたい課題は
・どのようにして当事者の声を可視化し反映させていくか
●尾辻かなこインタビューその3
・当事者以外の人たちにとっての問題について
・なぜ民主党から出馬するか
・事務所スタッフの方からみた尾辻さん
●尾辻かなこインタビューその4
・事務所スタッフからみた尾辻さん
・結婚式について
・GOレボリューションからの応援メッセージ
投稿者 asidru : 2007年06月28日 20:37 : トップへ戻る

















